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ノンフィクション体験記


1.金沢の怪


舞台は石川県金沢市です。

私は金沢にはちょっと詳しく撮影旅行で4度仕事で2ヶ月いた事があります。

ある時撮影旅行での出来事です。夕方になりそろそろ宿を探さねばと思い、旅館を訪ねて歩いていたのですが、行く先々のどの旅館にも泊めてもらう事ができなかったのです。

理由は「お客さん一人ではねぇー」と、どの旅館も同じ返事でした。
そんなこんなしているうちに11時近くになってしまいました。のんびりと宿探しをしていられなくなり、さすがに焦りが出てきました。
「今度の旅館がだめだったら今日は野宿を覚悟しなくてはならない」と心に決め、ある旅館の玄関をまたいだのでした。

「こんばんは一部屋空いてないでしょうか?」「泊めて下さい」すると人の良さそうな主人が「泊めてあげたいが、生憎いっぱいで・・・」と他の旅館と同様の返事でした。

私は最後の手段と思いドラマなどでよく見るシーンを思い出し「あの手」でやろうと考えたのです。
「お願いですから泊めて下さい。廊下でも倉庫でも構いません」、すると
どうした事でしょう。主人は奥さんを呼んできたのです。主人は奥さんに
「おーい、このお客さんにあの部屋を案内してやって・・」と言うのです。
すると長い廊下の突き当りの部屋があり、私はそこへ奥さんに案内されたのです。

「それではこの部屋になります。どうぞ・・・」
「なあーんだ良い部屋があるじゃないか!」
中に入ると広くて金蘭平びやかな素晴らしい部屋だったのです。

やっとの思いで手にした宿なので有難みを深く味わい、感謝するしかありませんでした。時間はすでに12時が過ぎようとしていて、とにかく寝るしかないと思い就寝の準備をし、床に入ったのです。

少しウトウトしたかと思うと、蒸し暑くてすぐ目が覚めてしまうのです。
繰り返して眠れそうもなく、いくら目を瞑って静かにしていてもなかなか眠れないのです。

街灯の光がかすかに入る洗面所の横に暗い部分があり、そこに何か人の姿が見えるのです。何だろうと思い見てみるとそれは影ではなく透き通っている人間だったのです。「うわぁー」と大きな声は出さなかったのですが、丑三つ時にはふさわしい物だったのです。

これでもう、完全に眠る事ができなくなってしまったのです。よく見てみると髪の毛の長い面長の女性で鏡の方を向いています。足の部分を見たが確かに足はなくて、上半身よりももっと透き通っていて足がない上半身だけの女性だったのです。

もうこうなったら恐ろしくて眠る事ができません。部屋の電気を全部点けて結局一睡もできませんでした。

明くる朝、食事の時に早速奥さんに質問してみました。

「すみません。お聞きしたいのですが・・・」「はい!」
「実は私が昨日泊った部屋ですけど、一体何があった部屋なんですか?」

「それは、主人から聞いて下さい。」私はなるべく人目の付かないところで主人に聞いてみたのです。「あのー怒らないから教えて下さい。」
「あの部屋は一体なにがあった部屋なのですか?」
「私は何度も体験しているので大丈夫です。」すると「あんたがどうしても泊めてくれというので案内したのですが、実はしばらく使っていなかった部屋なのです。」「それはどういう事ですか?」

「実は3か月ほど前に泊った女性が、あの部屋で亡くなられたのです。」
「それ以来あの部屋は使っていなかったのです。」
「それはどういう事ですか?」「自殺ですか?}「そうです自殺です。」

「うわぁー」とは心の中で思いましたが、
今思い出しても背筋がぞっとする思いです。







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